十三式技法 = 八法五歩はっぽうごぶ(八法五行とも)
八法はっぽう
1. 掤 ポン (字意: 受けること) :
手甲や前腕の背部で受ける。体全体に「ふくらみ」を持たせ、腕を円弧にして手甲側を相手に向け、胸との間に弾力があるようにする。
力は体全体から出て、すべての方向に向く。八法の中で最も基礎となる用法。
2. 履 リ (字意: しごく。流すこと) :
引き下ろし、引き込みの技法。捋リュウ(なでるの意)とも書く。
攻撃してきた相手の腕部あるいは肩部に触れて、相手の重心をずらして下前方向に誘導する。
3. 擠 チ (字意: ひしめき合って押し合う):
手甲と掌で押す。両手の掌を重ね合わせて相手を前方に押す。受けと押し。
4. 按 アン(字意: 手でおさえること。頭の上に手を置く様):
手の掌で相手を押す。力は腰部から前方に。
5. 採 ツァイ (字意: 摘み取る) 相手の前腕、手首を掴み取る動作。
指先を意識する
6. 挒 リェ (字意: 捺、捩じる)
一方の手で手首を押え、もう一方で肘部を上げて捻り上げる。腕を使う
7. 肘 ゾォゥ (字意: 肘部)肘あて、肘打ち。
肘部と股肱を用いた攻防法。肩と労宮を意識する。
8. 靠 カォ (字意: 寄りかかる、もたれる)肩当て。
肩(胴部を含む)や背を用いた攻防法。
五歩ごぶ
9. 進 ジン 進歩ジンブ、前に進む。意念が先に動く。
10. 退 トェ 退歩トェブ、後に退る。退去でなく、積極的な技法。
11. 顧 グ 左顧 ヅォウ グ、左を見回す。気を配る。
12. 盼 パン 右盼 ヨォパン、右を見る。用心する。
13. 定 ディン 中定チュンディン、真っ直ぐに立って重心を安定させる。
全ての動作は、意識を先行させ、決して力まないこと。
_________________________________________________________________
その他の基本
基本足型
馬歩 マーブー 馬に乗った姿勢(騎馬立ち)
弓歩 コンブー
前足が弓のように曲がり、後足が矢のようである(前屈立ち)
独立歩 トゥリーブー 一本足で立つ(片足立ち)
虚歩 シェブー 前足に重心をかけない(猫足立ち)
後坐歩 ホゥゾウブー 椅子に座ったような姿勢(後屈立ち)
構え
合抱 ホーパオ 抱球パオチュウとも。体の前で球 (気のボール)を両腕で抱える姿勢
姿勢と基礎動作
13式太極拳では、まず手足の位置、足運びや姿勢などの外形が学びます。そして外形が整ったら、それに呼吸法を加えます。動作に呼吸を合わせ、さらに気の流れを意識します。
それができたら、意念を用います。意が気を運び、気が体を動かすように意識を集中します。
そしてそれらすべてが全身の筋肉や骨を緩めてできるようにします。
____________________________________________
十三式太極拳の流れ
預備 (よび、ユーベイ) 12時方向を向いて、準備姿勢
踵をつけ、つま先を開いて直立姿勢
起勢 (きせい、チースー) 両足を肩幅に開いて、両腕を胸の高さにあげて、脚の付け根まで下ろす。
起勢のあとの13の動きは以下の通り。
1. 右攬鵲尾(12時)→ 2. 左攬鵲尾(6時) →
3. 右攬鵲尾(9時) → 4. 左攬鵲尾(3時) 以上前半、以降後半
5. 右龍回頭 → 6. 退歩右攬鵲尾 (4時半)
7. 左龍回頭 → 8. 退歩左攬鵲尾 (10時半)
9. 右龍回頭 → 10. 退歩右攬鵲尾 (1時半)
11. 左龍回頭→ 12. 退歩左攬鵲尾 (7時半)
13. 収式(12時)
各動作説明:
攬鵲尾(らんじゃくび、ランチュエウェイ)
鵲(カササギ)の尾っぽが上下左右前後にじゃれ動く様子表現している。
13式太極拳の前半の形で、掤・ 履・擠・按 の四つの形を前後左右(南北東西)の方向(12時、6時、9時、3時の四方向)に行います。始まりは、合抱(ホーパオ、胸前でボールを抱える形)です。
方向を変えるときは、 左顧 (ヅォウ グ, 左に転回)、右盼(ヨォパン, 右に転回)を行います。
龍回頭 (りゅうかいとう、ロンフェトウ)
龍が空中を跳ねながら、勢いよく遊んでいる様子を表現している。13式太極拳の後半の形で、採・挒・肘・靠の4つの形を斜め四方(4時半、10時半、1時半、7時半方向)に3歩前進しながら行なう。
退歩攬鵲尾(たいほらんじゃくび、ドェブランチュエウェイ)
龍回頭で3歩前進した後、退歩攬鵲尾で3歩下がり、元の中心点に戻る形で、掤・履・按・擠を斜め四方(4時半、10時半、1時半、7時半方向) に3歩後退しながら行なう。
収式 (しゅうしき、ショウシ)
最後の退歩攬鵲尾の7時半の向きから、最初の12時の方向に体の向きを戻す動作で収める形です。
退歩攬鵲尾(たいほらんじゃくび、ドェブランチュエウェイ)の動作
龍回頭で3歩前進した後、退歩攬鵲尾で3歩下がり、元の中心点に戻る形で、掤・履・按・擠を斜め四方(4時半、10時半、1時半、7時半方向) に3歩後退しながら行なう。
1. 上掤手(シャンポンショウ、立ち上がりながら頭の高さで掤をする)
2. 退歩掤(ドェブポン、一歩後退しながら後退歩で胸前で掤手を作る)
3. 退歩履(ドェブリー、一歩後退しながら後退歩で胸前で履手を作る)
4. 退歩按(ドェブアン、一歩後退しながら両手の掌を下に向けて手甲と掌が重ね合うようにして両手を交叉してからそれを解いて按をする)
5. 小履(シャオリー、その場で胸の高さから下方向に履リーをする)
6. 擠 (チー、胸の前で両掌を向かい合わせて擠をする)
一部を紹介すると
(写真は「5分でできる簡易十三式太極拳」より)
(写真は「5分でできる簡易十三式太極拳」より)
呼吸法
呼吸法には大きく分けると ①胸式呼吸、②腹式呼吸、③逆腹式呼吸があります。②腹式呼吸は、順腹式呼吸ともいい、横隔膜呼吸です。③逆腹式呼吸は丹田呼吸、あるいは体腔の呼吸ともいい、息を吐くときに下腹(丹田)を膨らませます。
太極拳の呼吸法は、逆腹式呼吸です。
鼻から息を深くゆっくり吸い、口からゆっくりと吐きます。息を吸うとき下腹を引っ込め、肩甲骨を外に開くようにして息を胸郭の背骨側に入れます。足裏から息が吸い上がるように意識します。
息を吐くときは、みぞおち辺りを凹ませながら下腹(丹田)を膨らませます。空気を下腹に落として足裏から大地に息を出すように意識します。
図参照(背骨のカーブの違いに注目。図は「太極拳と呼吸の科学」より)
姿勢の大事
太極拳の姿勢は、立身中正。百会と会陰を結ぶ直線は垂直であり、両足の湧泉穴を結ぶ線と交わる。
股関節を弛め落し、全身の力を抜く。
立ち姿はそびえ立つ山の如し、百会は頂上であり、湧泉は麓の裾野である。